導入事例
Roosterシリーズやサービスを活⽤している
様々な業界・業種、企業規模のお客様から、
ご利⽤の⽬的や背景、
利⽤後の効果についてご紹介します。
三菱ガス化学株式会社様
山奥など無人環境に設置した燃料電池をクラウド型IoTプラットフォームで遠隔監視・制御
2017年10月10日
三菱ガス化学株式会社様が開発・提供している「直接メタノール形燃料電池」は、災害停電時の「非常用電源/無停電電源」や商用電源を確保できない場所での「独立電源」として利用される製品で、山奥などの人里離れた環境に設置されることも多い。様々な場所に設置される燃料電池を遠隔から一元管理できるようにするため、同社はサン電子の「Bacsoft IoT Platform」を採用。遠隔地にある多数の燃料電池の稼働状況や燃料残量などをオフィスに居ながら確認でき、さらに停電や燃料枯渇などの異常発生時にはアラートメールを発報することも可能になった。
- 導入の背景
遠隔地に設置した複数台の燃料電池を一元管理したい!
新潟研究所 主席研究員
博士(工学)
谷口 貢 氏
三菱ガス化学株式会社様には、4つのカンパニー「天然ガス系化学品」「芳香族化学品」「機能化学品」「特殊機能材」がある。同社の新潟研究所は、主に天然ガス系化学品の研究をしており、天然ガスから製造されるメタノールを利用する燃料電池「直接メタノール形燃料電池」を開発し、2015年度から販売開始した。
「燃料電池といえば、最近は“水素”を燃料とする電池自動車などがメジャーになってきました。しかし、目に見えない気体の水素は扱いが難しく、貯蔵や輸送しづらい特徴があります。その点、直接メタノール形燃料電池の燃料である“メタノール水溶液”は液体で比較的安全性が高く、水に近い感覚で扱えます。もしメタノールを使い切ってしまったら、お客様自身がポリタンクから直接、メタノール水溶液を燃料電池に補充できます」。こう説明するのは、三菱ガス化学の新潟研究所で主席研究員を務める谷口貢氏だ。
メタノール燃料電池の特長は他にもある。例えば、独立電源として利用されるエンジン発電機は大きな騒音がするが、それと比較してメタノール燃料電池は音が小さく静かだ。また、メタノールは二次電池に比べエネルギー密度が高いため、長時間に渡って電力供給できることもメリットとして挙げられる。同研究所の主任研究員である清水甫氏によれば、「利用条件によって正確な稼働時間は変動しますが、200リットルのタンクを備えた燃料電池であれば、約200時間(8.3日間)は電力を供給し続けられます。二次電池と同じ体積なら、メタノールの方がはるかに長持ちします」。 こうした強みをもとに、メタノール燃料電池は無人無線基地局の無停電電源装置や、近くに商用電源がないスポーツ中継の独立電源などの用途で使用例があるという。
そんなメタノール燃料電池は、売って終わりの商品ではない。三菱ガス化学は、「停電時に問題なく電力を供給できているか」「燃料は枯渇していないか」などを監視する保守サービスを、燃料電池本体と合わせて提供している。そこで必要になるのが、様々なロケーションに設置された燃料電池を、遠隔から一元管理するシステムだ。これまでは複数台の燃料電池をまとめて管理するシステムがなく、1台の燃料電池に対して1台の監視用PCを用意する必要があった。そのため、燃料電池を販売すればしただけ、監視用PCが必要になった。コストがかかるだけでなく、複数の燃料電池を監視するためには何台ものPC画面を移り変わり見なければならないなど、監視の手間が煩わしく非効率だ。そこで同社は、多数の燃料電池を一元管理できる新しいシステムを探していた。
遠隔地監視システム構成
- 選択の決め手
Bacsoftとの出会いは展示会。「自由度の高さ」がニーズにマッチ
新潟研究所 主任研究員
清水 甫 氏
メタノール燃料電池を一元管理できるシステムを求めていた三菱ガス化学が、「Bacsoft IoTプラットフォーム」と出会ったのは展示会だったという。「展示会で初めてサン電子のBacsoftを知ってから、他ベンダーが提供するIoTプラットフォームと一緒に比較検討しました。その上でBacsoftを選んだポイントは“自由度の高さ”です」と清水氏は説明する。
Bacsoft IoTプラットフォームが標準搭載しているのは工場の生産ラインなどで利用される汎用プロトコルだったが、サン電子は三菱ガス化学製燃料電池がもつ独自プロトコルに柔軟かつ迅速に対応。燃料電池とクラウドを接続する3Gゲートウェイ「RoosterGX」にエッジ処理する仕組みを実装し、燃料電池のデータをクラウドに収集・蓄積できるようにした。PCやタブレット、スマートフォンなどのWebブラウザ経由でクラウドにアクセスすると、それぞれの燃料電池の状況がグラフィカルなアプリケーション画面で可視化される。また、事前に設定しておいた閾値をもとに、燃料電池の異常事態をアラートとしてメール通知することも可能だ。
またさらに、Bacsoftでは、コーディング不要でIoTアプリケーションを開発できるツール「Bacsoftアプリケーション・ビルダー」が提供される。可視化アプリの柔軟なカスタマイズが可能で、アラートメールの閾値も自由に設定変更できる。
メタノール燃料電池の保守サービスでは、三菱ガス化学が自ら燃料電池の状況を可視化アプリで確認したりアラートメールを受信したり必要に応じて遠隔操作したりするのに加え、燃料電池のユーザー企業にも可視化アプリを提供し、アラートメールを送信している。そうしたなか、IoTプラットフォームの“自由度の高さ”が重要になる理由は、監視項目やアラート用の閾値などは今後、ユーザー企業の要望を取り込みながら改良・カスタマイズしていくことが予想されるためだ。
「ユーザー企業様からのリクエストで、アラートの閾値を変更したり可視化アプリの画面レイアウトを変えたりする可能性がありますが、その作業を毎回ベンダーに外注していてはコストも時間もかかりすぎます。要件定義では意図している内容がベンダーに正しく伝わらなかったり、ベンダーとのやり取りに時間をとられて些細な変更だけのために半年かかることもあります。しかしBacsoftであれば、ある程度のことは1時間もあれば自分たちで変更できてしまうのが魅力です」(谷口氏) Bacsoftはアプリ開発や各種設定の変更が容易なため、わざわざ外注するまでもなく、自前で自由にカスタマイズや設定変更ができる。
- 評価と展望
直感的に使える。今後はクラウドに蓄積されたデータの活用を検討したい
天然ガス系化学品カンパニー
企画開発部 副主査 博士(工学)
芝田 大 氏
そんなBacsoft IoTプラットフォームの使い勝手について、清水氏は「直感的に利用できます」と語り、谷口氏も「基本的な設定で困ったことはありません」と続ける。 また、「PCやタブレット、スマートフォンで、あらゆる環境に設置された燃料電池の状況をいつでも確認できるのはとても魅力的です」(清水氏)と言う。山奥に設置した燃料電池であっても、3G経由でデータを収集しているため、わざわざ現地に赴かずとも燃料電池の稼働状況をチェックできる。
三菱ガス化学のメタノール燃料電池は、まだ販売開始して間もない。今後の展望について、同社・企画開発部副主査の芝田大氏は、「メタノールの安全性や長時間稼働などの観点から、当社の燃料電池に興味を持ってくださる企業様が増えてきました。当面は実際に使ってもらい、信頼を積み重ねていきながら、製品の認知度を高めたいと考えています。そして将来的には、年間数百台の出荷を実現したいです」と語る。
出荷台数が増えれば、さらにBacsoft IoTプラットフォームが担う役割も重要になる。なぜなら、数多くの燃料電池を管理することになるのはもちろん、膨大な量のデータがクラウドに上がるため、それらのデータを活用することでプロアクティブな保守サービスを提供できるようになるからだ。 「もし燃料電池が故障した場合はそこから遡って故障の原因や兆候を把握したり、さらにはこの兆候がある部品は『そろそろ寿命なので交換しましょう』と事前に手を打てるかもしれません。今後はデータ活用にも期待しています」(清水氏)
社名 | 三菱ガス化学株式会社 |
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本社所在地 | 東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル |
設立 | 1951年4月21日 |
従業員数 | 2,323名【連結:8,034名】(2017年3月末現在) |
事業内容 | 基礎化学品から半導体パッケージ基板材料や脱酸素材に至る機能製品まで、幅広く事業を展開 |
URL | http://www.mgc.co.jp/ |